水晶山産の岩石の割れ目に晶出している白色〜無色、針状〜皮膜状の結晶を名称不明鉱物として保管していたのだが、その多くがカイシク石であることが2010〜2011年にかけて明らかになってきた。皮膜状だと自信がもてないが、針状の結晶が確認できれば、その様子と母岩の構成鉱物等から、カイシク石かその他の鉱物かの判別はできるようになってきた。
このカイシク石のような針状の結晶のことが頭にあると、採集後や鉱石を細かく砕いた後の洗浄に気を使わないといけなくなり、それはそれで厄介なものである。水でおおまかに土を洗い流すまでは良いとしても、ブラシでゴシゴシと汚れを落とすわけにはいかなくなる。でもこの汚れを落とさないと、実体顕微鏡での観察がしづらいので、洗浄しないわけにもいかない。ほどほどに折り合いを付けて水洗いするしかない。
さて、この標本は、鉄雲母に挟まれた石英の割れ目部分に晶出したもので、細長い楕円状で奥行きは僅かな極小さい空隙に、上から下からカイシク石の結晶が伸びている。最初に見た時は、石が口を開けているようで驚いた。
なお、上の画像の白っぽい部分は、ほとんどがカイシク石である。