水晶山の鉱石の中には、石英に黒雲母を伴う単純な鉱物構成のものも多い。しかし、その単純さ故に、フェルグソン石などの水晶山を代表する希元素鉱物を含むことがなく、あまり注目をしてこなかったし、割って観察する機会もあまりなかった。
写真の母岩も主に石英から成り、副構成鉱物として長石、雲母を含む。これを割ると、淡い褐色〜白色皮膜状に見えるものが出てきた。これを拡大したのが上の写真である。
褐色土状の部分を核にして白色(透明)針状結晶が放射状に伸びているのが見えた。あまりに結晶が微小なため、針状であるのが辛うじて観察できるだけで、結晶の詳しい様子は確認できない。
この鉱物、水晶山では初産となるカイノス石であることが、分析の結果明かとなった。
産出の状態から推測して、水晶山のカイノス石は、そうめずらしいものでは無いであろう。
ただし、水晶山の鉱物には、テンゲル石をはじめとして白色で微細なものが多く、単に見かけだけで同定することは難しい。ちょっと結晶が大きかったり、色が付いているだけで、別な鉱物に見えてしまう。水晶山のこのような白色微細な鉱物については、整理する必要があるように感じる。これまで、テンゲル石としてきたものも、別な鉱物の可能性もあり注意していかなければならない。