ロッカ石からは少し離れてしまうのだが・・・・
水晶山を代表する鉱物の一つにテンゲル石が挙げられる。イットリア石や阿武隈石(ブリト石-(Y))に伴って、絹状光沢を持つ白色を呈し、粉状、皮膜状で産する。
水晶山からは、テンゲル石と同様又は似た産状の鉱物を何種類か産するのだが、何れも結晶が微小で、しかも極微量の標本しか得られなかったことから、X線による分析ができず、それらの鉱物には、「テンゲル石?」とラベルに書くしかなかった。
さらに、話は横道にそれるが、2000年代前半の水晶山は、希産鉱物を求めて以前よりも人が入るようになっており、比較的にぎやかな状態であった。数は、まったくの当てずっぽうだが、1月に1人しか訪れる者がいなかった状態から、毎週2、3組が入山するような感じになっていた。人が多くなったのは、この頃、あるズリから大きな褐簾石や燐銅ウラン石の美晶が得られたり、岩代石の発見があったりしたためであり、さらに、それらの情報が雑紙や新聞等で公になったことが原因であったように思う。
そのおかげでというべきか、この時期、ズリが大きく掘りこまれ、以前から考えるとずいぶんと下の層が顔を出し始めた。そんな、あるズリの層からは褐簾石-(Y)や鉄礬石榴石を主とする岩塊が産し、飯盛石、タレン石、ヒンガン石などの結晶を確認するに至った。その同じ母岩からは、白色で絹状光沢を持つテンゲル石に似た鉱物も産出し、分析の結果、これはロッカ石であることが明かとなった。
これとは別に、褐簾石-(Y)や鉄礬石榴石を主とする同じ母岩から、小さな晶洞に透明〜白色で板状の結晶の産出を確認しており、これが写真の標本である。実体顕微鏡などで、大きく拡大して見なければ、一見して白色、粉状であり、まさにテンゲル石?であった。試料は極少量であったが、分析により、これもロッカ石であることが明かとなった。
ロッカ石のこのような結晶は、ネット上を検索してみても見つからず、希な産状なのかもしれない。
せっかくの良質の標本であったが、残念ながら、標本は分析のために手放してしまい、手元には写真だけが残っているだけになってしまった。