ずいぶんと前に採集した標本で、しばらくほったらかしにしておいたものが、閃亜鉛鉱であることが分かった。
水晶山から閃亜鉛鉱が産出することは、「福島県鉱産誌」にも載っているが、残念なことに詳しい記載が無く、閃亜鉛鉱を産する鉱山のリストに書かれているだけであり、情報が少なかった。また、これまで金属系の鉱物と接する機会が少なかったことから、知識や経験もなく、同定できないでいたのである。分析にかけるという選択もあったのだが、当鉱物の周りの鉱物には放射線による焼けがまったく見られず、それほど珍しい鉱物ではないだろうとの予想をしていたため、優先順位が下がってしまった。
化学分析によると、9%程度の鉄を含む閃亜鉛鉱という結果であった。黒っぽい色からも、いわゆる鉄閃亜鉛鉱なのであろう。母岩は主に方解石、石英、長石、鉄雲母から成る。数も量も少なく、非常に希である。