Quartz 水晶 化学組成 SiO2
長さが10cm弱の両錘の水晶であり、私を水晶山に導いてくれた記念の品でもある。
大学の学生時代、火山学の教授がおり、この水晶を使って鉱物の結晶の性質を講義してくれた。そのせいもあって、よく見ると、各結晶面には、記号を書き込んだ痕跡が残されている。
教授の話によれば、この水晶は、水晶山の坑内に入り採取してきたものということで、この他にも数点の水晶を採集してきたらしい。
授業の話で、今も覚えているのは、こんな話である。なんでも、結晶面や劈開についての授業が終わった後に実験室から何かが割れる音がしたので、覗いてみると、さっき授業を聞いていた生徒が水晶を割っていた。何をしているのか問いただしたところ、生徒は、水晶の頭の部分を割って、綺麗な面を出そうとしていたとのこと。つまり、蛍石のような劈開の性質を利用して、水晶の頭の形を整えようと思って割ったのだ、という話である。実際には、水晶には劈開がなく、いくら割っても、整った面に割れることはない。
この話は、おそらく、生徒に鉱物の性質を教えるための作り話だと思うのだが、私には劈開よりも、教授が語る「水晶山」という響きと、採集した時の話、そして実際に見せられた水晶に妙に感動してしまい、その後、何度となく水晶山を訪れるきっかけになったのである。
この水晶は、その教授が退官する際に譲っていただいたもので、所有する水晶山産の水晶の中では最大のものである。