第1回 特集 「オートラジオグラフ」
−放射能写真−
使用した機材は次の通りです。
@簡易暗室 Aフィルム Bビニールテープ Cスポンジ状ゴム Dマジックテープ E試料 Fカン
@の簡易暗室は、暗室が無くてもフィルムの現像を行えるもので、両側から腕を入れて作業を行います。
手探りで、作業しなければならないので慣れが必要です。
Aフィルムは、何でもいいです。 可視光をひろって感光させるわけではないので、特に感度も気にする必要はないでしょう。
今回は、ISO100のネガフィルムを使用しました。
Bビニールテープは、フィルムの感光面に張り付けます。
鉱物を直接フィルムと密着させたいのですが、感光面が傷ついてしまい、きれいな像を得ることができません。
簡易暗室内で、注意深くフィルムに張り付けます。面倒な作業なのですが、変わる方法が見つかりません。
Cスポンジ状ゴム 鉱物は必ずしも平面ではなくデコボコしています。
できるだけフィルムと鉱物を密着させるために用いました。
まず、鉱物とフィルムを密着させ、これを両側からスポンジではさみ込みます。
Dマジックテープ Cのスポンジで挟んだ試料とフィルムの密着をマジックテープで保持します。
手探りで作業するため、粘着テープを多用すると互いにくっついて作業しにくくなってしまいます。
その点、マジックテープはやり直しが簡単なので便利です。
E試料(放射性鉱物) なるべく、平面性の高いものを選ぶといいでしょう。
Fカンは、試料とフィルムを密着させた後に、光を当てないために保存しておくためのものです。
もう少し大きい方が使いやすいのですが..
@石川産 モナズ石
板状のモナズ石で、石英に埋もれています。石英は放射線のために黒変しているのがわかります。
ラジオグラフでは、くっきりとモナズ石の輪郭が浮かび上がりました。
A水晶山産 トロゴム石
黒雲母に埋もれたトロゴム石で、褐色土状をしています。
同じトロゴム石なのですが、右下の方が放射能が高いのでしょうか、濃く写し出されています。
B水晶山産 ゼノタイム
黒雲母に挟まれた長石部分に埋もれているゼノタイムです。累帯構造が印象的な標本です。
ラジオグラフでは、灰色の結晶部分が白く写し出されました。
C水晶山産 フェルグソン石
黒雲母に挟まれた長石に埋もれたフェルグソン石などの放射性鉱物です。
ラジオグラフの写り方から見ると、一見何も無いように見える部分も濃く写っているところがあります。
これは表面が黒雲母に隠れているのでしょう。
とても、下の写真と同じ領域とは思えないほどです。
また、フェルグソン石だけでなく、別の比較的放射線の弱い鉱物も含まれている可能性があります。
<<合成画像>>
D水晶山産 トロゴム石・フェルグソン石など
黒雲母に挟まれた長石部分を側面から見たものです。
写真では個々の鉱物を確認するのが難しいと思いますが、上面から長石に向かって鉱物が埋もれているのがわかると思います。
ラジオグラフを撮ったら、見えづらかった希元素鉱物たちが浮かび上がりました。
写真をたよりに、標本を見直してみると、長石に意外に深く鉱物が伸びているのが確認できましたし、今まで確認できなかった鉱物を見つけることができました。
E水晶山産 トロゴム石・フェルグソン石など
Dの標本の裏側です。
長石に突き刺さるように結晶したフェルグソン石からは、比較的強い放射線が出ていることがわかります。
フェルグソン石は、閃ウラン鉱の微結晶を内包していると言われています。
赤く汚れて結晶が確認しづらかったり、黒雲母に隠れていて見えない放射性鉱物の存在を、ラジオグラフを用いれば確認できそうです。
また、放射線の強さから、鉱物名の同定のヒントが得られそうです。
以前から、一度やってみたいと思っていたラジオグラフを今回撮影することができました。
比較的簡単に撮影できますので、一度おためしください。
フィルムに傷が付いてしまい、見苦しい写真になりやすいのですが、傷は画像処理で取り除いています。
もっと簡単に撮影できるという方法等があれば、お知らせください。
記念すべき、第1回特集 いかがでしたか。
ご意見等、掲示板・メイルでお待ちしております。
[スペクトルの部屋][雲の部屋][岩石・鉱物コレクション][レポートの部屋][ヴァンゲリスの部屋]